Tokyoink

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伊東

「まず知っていただきたいのは、監査には3つの種類があるということです。

伊東

「私たちが監査を行うのは株主総会が終わった7月から3月。この期間に監査や意見交換会を50~60回行います。吉野原工場(埼玉県)、羽生工場(埼玉県)、大阪工場(大阪府)、土岐工場(岐阜県)、福岡工場(福岡県)といった製造現場、各地の支店、さらに子会社も監査役会の監査の対象で、各拠点に行く前には資料を読み込み、終わったら資料作成。社長や取締役とのインタビュー。取締役会、経営会議、各種委員会への出席。と、こんなスケジュールですから、そこは3人で役割を決めて効率良く回るようにしています。」

伊東

「堅苦しいイメージを持たれがちですが、「部屋にこもり、何かしている」というイメージはまったく違っています(笑)。」

伊東

「対応していただくのは部長クラスの管理職をはじめ、工場なら工場長、子会社なら社長さんといった役職者の方です。工場だったら30分から1時間で工場を視察し、各部署でどんな業務をしているか、予算の進捗状況をヒアリングし、さらに僕の場合は監査先からの意見も伺うようにしています。トータルで2時間ぐらいでしょうか。以前にも監査を行なっている拠点では、前回の指摘事項がどうなっているかの確認もします。」

伊東

「経理経験者が監査役に選任されるのは、経理知識があると会計監査人と複雑化する会計課題の意見交換がスムーズなためです。製造現場の視察では数字ばかりを見ているわけではなく、やはり製造業として目指している「労災がない職場」に重きを置いて、日本監査役協会が出している「監査役監査チェックリスト」に照らして見ていきます。 作業現場というのは、そこで働く人たちにとってはいつもと変わらない風景です。社内出身者とは違う目でそこを見ることで安全に役立つ指摘ができればと思っています。安全確保ができてくれば職場が整理整頓され、事故の未然防止、品質クレームの減少につながります。結果的に社員本人だけでなく家族、同僚にとっての安心にもつながっていくはずです。 僕は製造現場のプロではありませんが、前職は化学メーカーですから、そういう考え方に根ざして「直感的に気付いた安全」を指摘することはできるのかなと思っています。」

伊東

「任期中に2回行ける拠点もありますが、1回しか行かないところは初対面で次の機会はないことも珍しくありません。でも初対面でも遠慮なく言えるのは社外だからこそです。言える機会は今しかないとなれば尚更ですし、それが社外監査役のミッションですから思ったことは率直に話させてもらっています。」

富井

「私は昨年6月の株主総会で就任したので、皆さん初対面です。どうやってコミュニケーションを取るかは課題ですが、楽しいですよ(笑)。」

伊東

「当社のような監査役設置会社には3名以上の監査役が必要で、そのうち半数以上、3名なら2名が社外監査役でなければならないと会社法で決められています。監査役は、中立・公平にものが言える立場でなければならないからです。でも、監査というと指摘ばかりしているように聞こえるかもしれませんが、プラス面の話も積極的に聞きたいと思っています。聞いてみると全社で共有したいような良い取り組みが意外とありますから。」

富井

「1拠点あたり2時間ほどですが、終始議題に添って進めていくというわけではなくて、例えば私は今の業務のことだけではなく、(監査先の担当者の)入社後に配属された部署での経験や得意分野なども聞くようにしています。いろいろ聞いていると「ああ、だからこうなのか」と納得できることもあります。」

伊東

「会食でより深い話が聞けることもありますね。僕は2020年の就任なのでこれまでの任期の大半がコロナ禍。去年ぐらいからやっと少しずつ会食の機会が増えてきて、緊張が解けた中でコミュニケーションがとれるのはありがたいことだなと実感しています。」

小林

「そういう意味では私は潤滑油的として役立つように意識しています。私は社歴も40年ですし、地方の勤務経験も工場の勤務経験もあって前々から知っている人間が多いですから。監査を受ける側には遠慮もあるので、そういう緊張をほぐすのが私の役目かなと感じるところはあります。ちょっと雰囲気を和らげるとかね。」

伊東

「例えばですが、子会社の工場の監査はあえて夏の暑い時期に行くんですよ。名古屋の8月の夕方に行って、そこで体感した結果を経営層に伝える。そういうことも監査の一環として行っています。連続生産している工場だと暑さ対策は難しいのですが、スポットクーラーを集中的に配置して作業員が涼めるようにしたりと少しずつですが計画的に取り組んでいるところです。」

富井

「私は過去の監査の資料を必ず見てから監査に行くようにしていますが、行ってみると「あ、ここ変わったんだ」っていう発見があります。顔料の飛散を抑えるための集塵機が設置されていたりとか、工場長や子会社の社長さんが「今回これをやりましたよ」って話してくれるとやっぱり監査役としてうれしいですよね。「指摘を受けたことを吸い上げて中から改善していこう」という企業文化が東京インキにはあるんじゃないかな。」

伊東

「それは感じますね。だから決して私たちの手柄とかではなくて、監査役の一言が背中を押しただけでも十分だと思うんです。工場の自助努力があって、監査役会や監査部からの指摘がそこにうまく働いて結果を出せている。それが、社員の皆さんが安心してそれぞれの職場で躍動できるような会社の基盤構築ができている証しなのではないかなと思います。」

富井

「我々、指摘するだけの役割だとは思ってなくて「聞く立場」なんです。例えば改善提案でヒヤリハットの事案が出ている。「それに対してどういう改善をやっていますか?」とコンプライアンスの観点から聞く立場。「大丈夫ですよね」「やってますよね」と念押しするというか、ちょっと脇から支援するみたいなね。そういうことで良い方へ良い方へと少しずつ回っていくんじゃないですか。」

伊東

「でもね、監査では公正中立な立場を貫いていますが、たまたま縁があって東京インキの監査役に就いたのですから、会社のファンであり、事業の応援団でありたいと思っています。次の100年に向けて、社員の皆さんが躍動できる会社づくりの一助になれたらうれしいです。」

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