Vol.8エシカル消費の背中押す水なし印刷
UVシステム用水なしインキ「UV OL アルックス」
「つくる責任」の見える化で
環境にやさしい商品を選びやすく

今回は、生産・技術部門インキ技術第1部 斎藤さん、営業部門インキ営業第1部 大塚さんにお話を伺いました。
私たちが日々の生活を続けていくためには、食料品や日用品を買い、使い、最後にはそれを捨てなければいけません。近年、環境問題への関心が高まる中で、「こうした自分たちの消費行動が地球環境に与える影響を少しでも少なくしよう」という意識が消費者のあいだで生まれています。「エシカル消費」という考え方です。
例えば値段もクオリティも同じような商品であれば、「製造工程や廃棄後の環境負荷がより少ない商品を選びたい」と考えるのもエシカル消費です。このとき手がかりになるのが環境マーク。「水なし印刷」で刷られた印刷物に表示が許される「バタフライロゴ」もそのひとつ。もしご存知なければページトップの写真を今一度ご覧ください。パッケージ側面に印刷されている蝶のマーク、これが「バタフライロゴ」です。
今回は、この「バタフライロゴ」やその右隣の「VOC FREEマーク」だけでも知ってもらえるとよいのですが、せっかくですので「水なし印刷」がどうして環境にやさしいのかもご紹介できたらと思います。
大塚「SDGs時代の今になって『環境にやさしい印刷』として注目されていますが、私が新人だった頃すでに水なし印刷をやっている印刷会社はいくつかありました。実は歴史のある技術なんです。そもそもは高精細な印刷クオリティを実現できるということで開発された印刷方式です」
斎藤「水なし印刷の『水』とは『湿し水』のことです。一般的な印刷では紙に湿し水が浸透するので、そのせいで紙が伸びて印刷再現性が損なわれるんです」
大塚「版が大きければそれだけ紙伸びも大きくなりますから、見当が合いづらくなって結果見当ズレが起きます。その点、水なし印刷は紙伸びがゼロ。つまり見当ズレが起こり得ない印刷と言えます」
しかし、水なし印刷は版やインキといった材料のコストが割高。費用対効果がネックとなって日本ではそこまで普及していないのが実情。一方で「地球温暖化対策のけん引役を担ってきた欧州では水なし印刷が一般的」と大塚さん。
斎藤「湿し水には揮発性有機溶剤(VOC)が含まれています。廃棄された有機溶剤が揮発し、大気中で紫外線などによって分解されると最終的には水と二酸化炭素になります。つまり温室効果が高まってしまうんです。水なし印刷では湿し水を使わないので廃水や廃液を大幅に削減できるというわけです」
一般の人々の環境への危機意識が強い欧州では、企業の「つくる責任」に厳しいまなざしが向けられるのが常。水なし印刷が普及している背景にはそうした欧州ならではの事情があるようですが、斎藤さんと大塚さんは「カーボンニュートラルが世界共通の目標になった今、日本でも水なし印刷へのニーズは高まるでしょう」と口を揃えます。
大塚「実際ここ数年、VOC FREEマークへのお問い合わせが増えています。東京インキでは東レ株式会社、株式会社エヌエーシーと連携して水なしインキの開発を進めてきましたが、東レの水なし版に最適化したUV OL アルックスというインキで刷った印刷物には、バタフライロゴと当社オリジナルのVOC FREEマークを併記していただくことができます」
斎藤「こうしたマークが入っていなくても水なし印刷で刷られている印刷物はたくさんあります。でもマークが入っていることで、環境配慮に取り組んでいる企業かどうか買う側が見分けやすくなりますし、企業側も環境への姿勢を明確に打ち出したマーケティングやブランディングがしやすくなります」
2021年、新型コロナウイルスの感染拡大により2年ぶりに開催されたCOP26では多くの国が「2050年カーボンニュートラル」を表明しました。2020年代はその実現に向けた「決定的な10年間」と位置付けられています。日本の水なし印刷にとっても、まさに今このタイミングが勝負の時と言えそうです。
大塚「実は毎年12月10日の創立記念日に、東京インキでは自社製品が使われている記念品が配られるのですが、2022年はUV OL アルックスでパッケージを印刷したお菓子が記念品に採用されました。他の事業部の方や社員の家族にも『水なし印刷』を知ってもらえるとうれしいです」

2022年の創立記念日に社員に配られた「名古屋キャラメルショコラ」

大塚「パッケージ印刷にUV OL アルックスが使用されています」

大塚「東レとのプロジェクトのテーマは『環境』。本気で環境に取り組む企業のために選択肢を提供していきたい」

UV OL アルックス開発チームのメンバー